COLUMNコラム

2018/12/11コラム

サービスの悪用防止を考える

ビジネスの成長を考えるとき、見落としがちなのはビジネスが悪用されるリスクです。

便利な製品やサービスを提供することが企業に期待される役割ですが、便利であるからこそ、製品やサービスを悪用する人が出現するリスクをいつも考えておかなければなりません。せっかくの良い製品やサービスも悪用による被害者で溢れかえってしまっていては、市場から見放されたり、場合によっては社会的非難を受けるような事態に陥ってしまったりすることさえあります。
もちろん悪用を100%防ぐことは簡単ではありません。しかし、サービスを開始する前からしかるべき準備をしておくことで問題が起きたときの対処を変えることができます。
例えば、ヤフーが2006年に「Yahoo!パートナー」というサービスを始めた際には、売買春に悪用されないように利用者のトレーサビリティの確保や投稿内容の事前確認などを組み込みました。その上で捜査機関にもあらかじめ相談をしながらスタートしています。
結果として、他社のサービスが引き起こした社会問題に対応するために「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」(出会い系サービス規制法)が制定されたときも、Yahoo!パートナーは既存のサービス運用のままで新たな規制への対応ができている状態でした。
悪用した犯罪者を追求するためには捜査機関の協力が不可欠ですが、協力を求めるにあたって最も重要なことは、ビジネスサイドが出来るだけ悪用されないための工夫を重ねていくことです。悪用した犯罪者を捕まえることは捜査機関の仕事であり、真剣に取り組んでいただけますが、やはり防犯はビジネス側での犯罪防止体制の確保から始めるのが正しい姿勢です。サービス提供会社が、自分たちもサービスを悪用されている被害者だと主張してしまうような姿勢は、社会的にも受け入れられていません。
サービスが悪用されていることを知りながら何も対応しなかった会社の経営者や責任者が、悪用した犯罪者の幇助犯として捕まったというようなニュースが流れることもありますが、正に、防犯体制確保を怠った結果です。このような失態は避けなければなりません。防犯体制が必要だという理由は、ここにもあります。
また、捜査機関が動いてくれないというような不満の声を他社の方から聞くことがしばしばありますが、多くの場合、捜査機関の考え方や姿勢を理解していないことから感じている不満が根底にあるように思います。また、捜査は所轄署(被害者の所在地の警察署)が行いますが、県警本部(東京の場合は警視庁)の関与があるケースもありますし、複数の県にまたがるようなものは県警同士の合同捜査となるケースもあります。
インターネットビジネスのように全国に被害者が散らばってしまっている犯罪では、サービス提供企業に全国の警察署から同じ利用者(被疑者)に関する照会が何通も来ることがあります。捜査が各県警・各署単位で行われているためです。捜査情報はプライバシーに関わるものですので、捜査機関内といえども簡単に共有されているわけではありません。捜査権限という強い権限を持っている機関であるからこそ抑制的に活動しているわけです。
このような捜査機関の在り方を充分に理解した上で、どのように協力を仰ぐことができるかを考えるというのが、悪用リスク対応の肝の一つといえるでしょう。(別所)

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