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医療機関の人員や医療従事者の待遇は「不十分」51%「適切」21%

厚生労働省の調査によれば、2024年度は病院の約7割、診療所の約4割が赤字とされています。この背景にある物価や人件費の上昇などに対応するため、政府は2026年度の診療報酬改定で全体を2.22%引き上げることを決めました。医療機関を巡る現状認識や、医療における給付と負担のあり方に対する考え方などを把握するため、12月16日、全国の18歳以上の1,000人を対象にオンライン調査を実施しました。

調査結果サマリ

医療機関の人員や医療従事者の待遇は「不十分」51%「適切」21%

- 診療報酬増の財源「法人増税」「高所得者の保険料増」「医療効率化や無駄削減」各3割拮抗 -

この1年間で病院や診療所を受診7割
この1年間に病院や診療所で「受診した」が73.1%に上り、「受診しなかった」は25.5%だった。
「受診した」という人を地域別に見ると、中国と九州がいずれも8割台と最多だった一方、関東、四国、沖縄が6割台で最も低かった。職業別では、教職員は全員で最多となり、会社役員・団体役員と医療、福祉関係の職員等がともに9割で続いた。これに対し、農林漁業従事者、契約社員・パート・アルバイト等、自営業・専門職(士業等)・自由業がいずれも6割台で最少だった。
景気が良いと感じる人では8割台後半だったのに対し、悪いと感じる人は7割台前半となった。支持政党別では、れいわ新選組が5割台で最低だった。

病院や診療所の経営「危機的」7割
第25回医療経済実態調査(厚生労働省)によれば、2024年度は病院の約7割、診療所の約4割が赤字となっている。この状況について「危機的だと思う」は75.9%に上ったのに対し、「特に何も思わない」は13.8%だった。
「危機的だと思う」人を地域別に見ると、中部が8割台でトップだったのに対し、最低は四国の5割だった。職業別では農林漁業従事者、医療・福祉関係の職員等がともに9割以上だった。年収別では、収入のない人は5割台で、おおよそ収入が上がるにつれ増えてゆき、2,000万円以上の層では全員となった。支持政党別では、立憲民主党、日本維新の会で8割を超したのに対し、日本保守党は6割台で最低だった。

医療機関の人員や医療従事者の待遇は「不十分」5割
現在の医療施設の人員体制や医療従事者の待遇について「不十分だと思う」が51.2%を占め、「適切だと思う」21.9%、「手厚いと思う」6.5%と続いた。「わからない」が20.4%あった。


「不十分だと思う」とした人を地域別に見ると、四国が2割台で低かった。職業別では、医療、福祉関係の職員等が8割で群を抜いたのに対し、会社の正社員・団体の正職員、専業主婦・専業主夫、年金生活・無職は4割台で最低だった。
過去1年に医療機関を受診した人では5割台半ばだった一方、受診しなかった人は4割台半ばだった。支持政党別では、維新、れいわが7割台で最多となり、自民党、参政党、保守、「支持する政党はない」とする無党派層が4割台で最も少なかった。

診療報酬改定は「頻度増やし毎年に」4割
診療報酬は、原則として2年に1回改定されているが、インフレ局面では物価上昇や人件費の高騰を十分に反映できていないとして、毎年改定すべきだという指摘がある。診療報酬が引き上げられる(引き下げられる)場合、患者の窓口での自己負担や医療保険料などが増える(減る)可能性がある。診療報酬の改定頻度についてどうすべきだと思うかを聞くと、「改定頻度を増やし、毎年改定すべきだ」42.5%が最多となり、「現行のままでよい」26.9%、「現行よりも改定頻度を減らすべきだ」7.5%と続いた。「わからない」が23.1%あった。

「改定頻度を増やし、毎年改定すべきだ」とした人を職業別に見ると、医療、福祉関係の職員等が7割と突出して多く、公務員(団体職員や教職員を除く)、農林漁業従事者、専業主婦・専業主夫がいずれも3割台で最少となった。
年収別では、収入のない人は2割台、100万円未満の人は3割台だったのに対し、2,000万円以上の人は9割と群を抜いた。過去1年に医療機関を受診した人は4割台半ば、受診しなかった人は3割台半ばだった。景気を良いと感じる人では、5割台後半だったのに対し、悪いと感じる人は4割台前半となった。
支持政党別では、国民民主党、参政、共産党などで5割以上となったのに対し、最低は公明党と無党派層の3割台だった。

医療給付は「負担増抑え可能な範囲内で充実を」56%
診療報酬を引き上げる場合、医療従事者の待遇改善や地域医療の維持にプラスとなる半面、患者の窓口での自己負担や納める医療保険料などが増える可能性がある。医療の給付の充実と負担増の関係について自身の考えに最も近いものを一つ選んでもらうと、「負担増を抑えつつ、可能な範囲内で医療の給付を充実させるべきだ」が56.3%に上り、「医療の給付充実よりも、負担軽減を優先すべきだ」は17.1%、「負担が増えても、医療の給付充実を優先すべきだ」が14.6%となった。


前回(2024年度)の診療報酬改定では、本体部分の改定率は+0.88%だった。2026年度の診療報酬改定に向けて、小池百合子東京都知事は厚生労働省に対し、診療報酬の本体について約10%の引き上げを求める緊急提言を提出している。2025年度の最低賃金の引上げ率は+6%強、2025年春季労使交渉の平均賃上げ率は+5.26%などとなっているが、診療報酬の本体の引き上げ率10%についてどう思うか聞くと、「適切だと思う」28.5%、「高いと思う」27.4%、「低いと思う」11.6%、「そもそも引き上げる必要はないと思う」9.7%の順だった。「わからない」は22.8%を占めた。

診療報酬増の財源は「法人増税」「高所得者の保険料増」「医療効率化や無駄削減で」
仮に診療報酬を引き上げる場合、その財源をどのように確保するのがよいと思うか複数回答で聞くと、上位3位は「法人税増税」33.8%、「高所得者の保険料率の引き上げ」31.6%、「医療の効率化や無駄の削減による財源確保」31.5%と拮抗した。


診療報酬の引き上げにより追加的な財源が確保された場合、その配分先として重視するものを複数回答で聞くと、上位3位は「医療機関の人員体制の強化」43.9%、「医療従事者の待遇改善」43.4%、「医療機関の施設・設備の充実」35.1%の順となった。

高市内閣支持率47%
高市内閣を「支持する」47.6%(前回25年11月26日調査47.7%)、「支持しない」29.6%(30.5%)だった。高市内閣を支持するとした人を支持政党別に見ると、自民では9割台に達した一方、同じ与党である維新では6割台だった。

政党支持率は自民党15.8%(前回25年11月26日調査18.2%)、立憲民主党5.3%(5.4%)、日本維新の会5.1%(4.6%)、国民民主党4.7%(3.5%)、参政党3.9%(3.5%)、れいわ新選組3.0%(3.7%)、共産党2.0%(1.3%)、公明党1.8%(1.6%)、日本保守党1.8%(1.3%)、チームみらい0.7%(1.0%)、社民党0.2%(0.0%)、その他の政党・政治団体0.6%(0.7%)、支持する政党はない51.3%(51.9%)。

回答者1,000人の属性、各設問のグラフや解説などは、2ページ目以降に掲載しています。
クロス集計が入った調査結果資料はこちらのPDFファイルからご覧ください。

KSIオンライン調査とは
新産業に挑戦する企業に対して政策活動やリスクマネジメントのサポートなど、パブリックアフェアーズ領域で総合的なコンサルティングを行う紀尾井町戦略研究所株式会社(KSI、本社:東京都港区、代表取締役:別所 直哉)は、月に2回程度、時事関係のトピックを中心としたオンライン調査を、全国の18歳以上の1,000人に行っています。
調査資料やデータの利用、取材や放映などのお問い合わせ、新規調査案件のご相談は、本ページの最後をご覧ください。

 

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