国際的に抜きんでている領域があると「〇〇大国」などと表現をすることがあります。たとえば日本は「アニメ大国」とか「長寿大国」などと言われることもあります。しかしとりわけ、昨今の不安定な安全保障の観点からすると、「経済大国」であることが非常に重要なことだと思われます。人口学者のポール・モーランドは、世界の歴史を紹介しつつ、軍事力以外で、一国の力を決める最も重大な要因は経済規模であるとしています。
経済大国の定義も色々あると思いますが、GDPの大きさで見るとすれば、日本は、2023年にドイツに抜かれ米ドルベースで世界4位につけています。しかし、この先の高齢化や人口減少を考えれば、相対的にどんどん低下していくと考えるのが自然です。そうだとすれば、経済大国であり続けるためにこの先目指さなければならないのは、効率よく生産性をあげることに尽きます。高齢化も人口減少も、今となっては急激に改善する術はないからです。
日本では「儲けることは美徳に反する」という考えを持つ人も多いと言われていますが、人々に支持される商品・サービスを提供してたくさんの収益を得ることは、いたって正常な事業の営みであり、むしろ望ましいことです。そのようにたくさんの収益を出すことをみんなで目指さなければGDPは上がりようがありません。
支持される商品・サービスが提供され、消費者が安心してそれを購入し、それによって得られた儲けを従業員や株主に還元し、そのお金で消費をしてどんどん経済をまわす。その循環に阻害要因が発生しないよう政府は環境を整える、といったことがうまくまわっていることが大切です。
私は政策コンサルタントをしており、規制に関わる案件が多いのですが、上記の循環が適正にまわっているかどうかを常に意識しなければならないと思っています。消費者の安心が守られなければ当該業界は健全に発展しません。逆に消費者の安心に過度に偏って規制をかければ事業はやりづらくなります。そのちょうどよいバランスを保ちながら、経済が発展し、仮にこの先人口減少を止めることができなかったとしても、子どもたちの時代も、その先も、豊かな国でいられるよう目指したいものです。
(ここで述べる内容は、筆者の個人的な見解であり所属組織の立場や意見とは異なる場合があります。)
慶応義塾大学卒業。東京エレクトロン株式会社新卒入社を経て、ヤフー株式会社に入社。ヤフーでは当社代表の下で法務部から政策企画部門を立ち上げ、法務部長、政策企画本部長を務める。急成長するヤフーやグループ会社のビジネスを法的側面から支援するとともに、官公庁、その他関連各所との折衝を行い、健全なインターネットサービス発展のための適正な枠組み構築に尽力。取締役会事務局を担う等、ヤフーのコーポレートガバナンスの骨格を構築した。その後、金融ビジネス部門に異動し、金融本部長、ジャパンネット銀行(現PayPay銀行)代表取締役を歴任し、日本銀行出向時の経験も活かしてヤフー(旧Zホールディングス、現LINEヤフー株式会社)グループにおける金融ビジネスの拡大に努める。投資会社に所属後、紀尾井町戦略研究所に参画。一般社団法人ソフトウェア協会の理事や他社の社外取締役を兼職。
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