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別所直哉代表に聞くパブリックアフェアーズ 【第3回】

政策決定プロセスは複雑、読み解きは経験と知見が必要
~ルールメイキングに意欲的なスタートアップは増加~

パブリックアフェアーズについて弊社代表の別所直哉に聞くインタビューの第3回です。
※過去の記事はこちらからご覧ください:第1回第2回

― 政策提言やロビイングは、時間や費用を掛けて努力を惜しまないことが必要だということが分かりました。企業規模の小さいスタートアップなどのロビイングについては、どのように見ていますか。

(別所)スタートアップは企業としての規模は小さくとも、新しい技術の社会実装などを目指しているために、既存の規律の枠組では足りず「現行制度を変える必要」に直面するケースが多くあります。それゆえ、ルールメイキングの重要性を認識しているスタートアップは増えているというのが実感です。ただ、ロビイングに関心があって意欲的でも、どのように動いていいのかが分からないことが多いようですね。

ロビイングをどのように行えば良いのかといった情報は、業界団体などに入っていないと十分に得られなかったり、そもそもそういった業界団体がなかったりすることも多いのが実情です。そういった情報を知る機会も十分ではないのが実際のところなのです。しかし、ロビイングについて勉強する機会などがあれば、また変わってくると思っています。

―動き方が分からない理由は何なのでしょう。

(別所)政策決定のプロセスについて一定の知識がなければ、いったい「いつ、どこで何が起きていて、どこの誰に話をしたらいいのか分からない」ということになります。しかし、政策決定プロセスについて突っ込んだ説明がなされている文献などは、ほとんどないのが実情です。ですから、ロビイングに動き出そうとしても見当が皆目つかず、情報不足のままに、行政機関や国会議員にアプローチしようとしたり、ロビイングを知っていそうな人に話を聞きに行ったりすることになりがちです。これでは行き当たりばったりになり、うまくいくケースが稀にあったとしても、思ったように進まないことが多いのは不思議ではありません。

―政策決定プロセスの把握は簡単ではないのですね。

(別所)まず、大きな枠組がいくつか存在していますので、そこを理解することから始める必要があります。予算関連法案以外の法案についての基本的な決定プロセスは、私の著書「ビジネスパーソンのための法律を変える教科書」でも触れていますが、下記の通りです。

また、上記以外にも予算と税制改正に関するプロセスや、いわゆる骨太の方針が決まっていくプロセスなどがあります。そういった枠組を知っておくことが重要です。

―いろいろなパターンがあるわけですね。

(別所)これらのプロセスの実際上の動きは、法案等の内容や国会内の状況などによって影響を受けます。このため、個別具体的な動態が変わってくることを理解しておくことも必要です。政策決定は、大きく見れば一定の枠内で進んだとしても、個別の案件ごとにいろいろな要素が入ってきて複雑に分かれ、最終的に千差万別となります。つまり、政策決定プロセスには一般化できる部分と、そうでない部分があるということです。プロセスを詳細に説明した資料などが見当らないのも、ここに大きな理由があります。

そして、想像以上に多様な経過を読み解いていくのは、そう容易なことではありません。一定の経験や知見などが、どうしても必要になってくるわけです。これらは大企業にとっても中小企業にとっても同じことです。政策コンサルティングが求められている理由は、この多様なプロセスについての知見を有しているからに他なりません。

 

別所直哉プロフィール

慶應義塾大学法学部法律学科卒業後、持田製薬株式会社に入社。労務、法務・知財、事業開発を担当。1999年にヤフー株式会社入社。法務部長、法務本部長を経て2018年まで執行役員を務め、法務・知財、広報、政策企画、公共サービス、リスクマネジメント部門を管掌。2019年10月より京都情報大学院大学教授。20年4月より紀尾井町戦略研究所株式会社代表取締役。
検索エンジンのための著作権法改正、インターネット利用のための公職選挙法改正、海外コンテンツへの課税のための消費税法改正、債権法改正など数多くの法改正に企業の立場から関わる。

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